12.28.2010

Mother's Heart

菊本さんは、みんなにとってお母さんなんだなあ、と思った。

ナイロビの中心部からバスで40分ほど、ナイロビ市との県境にあるマトマイニ・チルドレンズホームhttp://www.geocities.jp/scckenya/を訪ねた。この孤児院は、菊本さんという日本人が、23年の長きにわたり奮闘・運営されている草の根NGOである
ここでは、かつて路上生活をしていた子供など二十人ほどが暮らしている。不遇であった子供たちは、マトマイニでしっかりとした生活と教育を受ける機会を得ることにより、本来の持っていた能力を発揮することが出来、中には、国立大学に進学した子もいる。路上暮らしであった子供に、高い能力が秘められていたということである。また、ここを巣立った子供たちは、技能を身につけ、一人前となり、それぞれがしっかりと働き、生活しているとのこと。これらは、チャンスを得ることが出来たのならば、誰もが羽ばたき、空高く舞い上がることが出来るということなのだろう。
また、スラムに住むシングルマザーたちなどに職業訓練を行うと共に工房を開き、工芸品を作っている。今、ここで作る動物のフェルト人形(下部の画像を参照)が大ヒットして売れており、製作が注文に追いつかないほどだという。製作に当たる女性たちは、頑張ることによって、頑張りに見合った収入を得ることが出来、それにより生活は安定する。そしてさらに、女性たち自らの提案でデザインしたカラフルな色あいのキリンなどが、特に人気を呼んでいるそうだ。社会で弱い立場に追いやられがちな女性たちでも自ら考え、行動できる。受け身の、誰かの指示待ちだけではない生き方が出来る力があるということだ。
これらのほか、ナイロビの日本食レストランに卸す日本野菜を作ったり、ゼロエミッション、エコロジーを目指し、バイオガス利用など、様々なことも行っている。

ただ、ここまでに来るまでには、試行錯誤の連続だったとのこと。職業訓練の末に作れるようになった織物や陶器なども、決して悪くない物なのに思ったように売れない。フェルト人形は、やっと出た売れる工芸品なのだとのこと。また、孤児の引き取りについても、ケニアは法治国家なので、当然法律に基づく必要があり、それに伴い、ケニアの役人も関わってくるのだが、発展途上国ではよくある汚職がからんできて、彼ら役人の心無い行いにより、本来救われるべき不遇なストリートチルドレンが救えないこともあるという。今回、マトマイニが直面する困難の、ほんの一端を聞いたに過ぎないが、一個人ではどうにもならない問題もあり、その悩みの深さは、説明してくれる菊本さんの曇った表情からも伺えた。子供たちとも話しをしたが、常に無邪気に笑うわけではない。希望の職業を聞いたつもりだった「将来は何になりたいの?」との質問に対して、暗く遠くを見るような眼で答えたジョンの、「良いお父さんになりたい」に、彼が受けてきた悲しい過去を垣間見たようで、言葉を失った。ただ、明日からマトマイニのみんなでキャンプだよね?と聞いた時に見せてくれた、ジョンの心底うれしそうな笑顔には、こちらが救われた気がした。どうか明るい未来へと歩んでいって欲しいと思った。

アフリカの地で、日本人の個人が運営するNGOは、本当に大変なことの連続であることが容易に推察できる。ボランティア等に対する文化の違いもあり、欧米のNGOやボランティアのように、寄付も含めた組織として、安定したシステムが築き難く、支援者はいるものの、菊本さんの双肩に掛かる重さは相当なものだろう。
何故、この大変な活動を続けているのですか?と質問してみた。
「(ケニアの普通の)みんなの中にいたいと思ったから」
という答えが返ってきた。飾り気のない、心の底から出てきているであろう言葉に、菊本さんの、このマトマイニの温かさを見た気がした。人と人との触れ合いの中にあるべきとの考えなのだろう。菊本さんは、皆から「お母さん」と呼ばれているとのことだが、本当にお母さんの心を持つ人なんだと思った。根気よく子供たちや女性たちに向き合う姿勢は、我が子に対する母親の姿そのものだ。つまづいても、問題を起こしても、見捨てずに向き合う。菊本さんの眼から感じるものは、母親が持つ、成長していく者に対する温かい視線だと感じた。
今回の訪問で、NGO活動の根本にある温かさを見た。今後も大変なことがあるであろうけども、菊本さん、マトマイニのスタッフ、子供たち、女性たちに、暖かな陽射しが降り注ぐ毎日となることを心の底から祈りたいと思う。そして、恵まれない人たちに対して愛情を持って接し続けている菊本さんに、最大の敬意を表したい。

SAVE THE CHILDREN CENTRE(SCC) (マトマイニ チルドレンズホーム)
1984年設立のケニアに本部を置き、ケニアで活動している草の根NGO。養護施設マトマイニチルドレンズホームを運営し、孤児やストリートチルドレン、貧しいスラムの住民達を対象に数々の自立支援活動をしている。

※本日のブログの作成にあたって、SCCのホームページや会報も参考にさせて頂きました








子供たち、支援者の方、菊本さん

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

怪我の功名?
最初から計画してたみたいな、
素晴らしいレポートです。
フェルトのキリン、カワユイね。
色使いが素敵。

Yasuto Oishi さんのコメント...

tsutomuさん
本当に意味あるケニア滞在になりました。
おっしゃる通りに、カラフルなキリンは、本当に良いですよね。デザインのセンスがあります。